検査結果の出た日、家族が揃ったところで、全員に説明したのはお母さん。
私はすでに知っていたから、もう聞くのもおぞましい。
そんな時ですら、父と母の相変わらずの喧嘩。
痴呆が入ってきて、頑固になって来たのかなんなのか・・・
人を馬鹿にしているのか、なんなのか・・・
本当に、喋りたくない!
結局、それがあの人の本質なんでしょう。
知らなかったんだもん。
ありがとう
ごめんなさい
この言葉を使えないなんて。
そんな人相手に、母は、それでも相手をするから、凄いよね。
次の日の朝、父は母の病気のことを、一切覚えていなかったらしい。
痴呆だからね・・・
覚えていなくても・・・とは思うし。
一応、父親は父親なりに、手伝おうとは思っているみたいだけど、
全て、裏目。
検査の日。
夕方からだったけど、夕飯の支度はちゃんとしてあるからと父親には言って出たのに、帰って来たら、鶏の腿肉が美味しそうな感じに2枚こんがり焼けていた。
私なりに、泣けて来ました。
母親は、それを見て激怒。
痴呆の入った父親が、
ありがとうもごめんなさいも言えない父親が、一応、母親のことを気遣って
夕食の支度をしなくても良いようにと、買い物に行って、鶏肉を買って来て、焼いたわけ。
最近、なぜか、食べきれないものを買って来て、母親に怒られている父親。
今日は、買わなくても良いからね!と言って出てから、3時間も経っていないのに・・・。
お母さん、もう、お父さんに怒るのやめよう。
お父さんは、もう、覚えていられないんだから。
だから、もう、体力使うような喧嘩を、お父さんとしないでください。
私が考えていたこの未来は、
父親は先に亡くなり、なんとなくボケて来た母親が、ある時入院し、眠るように亡くなることをイメージしていた。
こんなにはっきりと、母親が死を見つめることになるなんて。
姉と私に、
「何か、しておいて欲しいことはある?」
と聞いてくれた。そして、わずかな宝石のことを教えてくれた。
「残してやれるものはないけど」
と。
何にも、入りません。
もうちょっと、一緒にいようよ。
それだけだよ。
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